「当初、下高井戸分水の話は本にならないだろうと思っていたの」
「なぜ?」
「こんな狭い地域の話は購入するかも知れない人の母数が少なすぎるから」
「それで?」
「まあ、複数の分水の話を集めた本を作るから下高井戸分水は君に原稿を依頼するという話があれば、それはそれでありだったけどね。そういう話にもなっていない」
「自分から企画する本じゃないってことだね」
「そうだな。そういうことだから、この件は本に馴染まないということでまあいいかと思った」
「なぜそれが変わった」
「ある日、気づいた。知ってることだけ書いた薄い本を電子書籍として売るだけなら、コストも時間もほとんど掛からないのではないかってね」
「雑然と散らばったブログの記事と違って、読みやすくまとまっているわけだね」
「そう、要点だけ書いた」
「しかし薄いね」
「重要な情報は極めて少ないからね。それに変なエッセイで水増しはしてないから。その代わり、値付けも安くしておいた」